日本のエネルギーミックスの出発点となった福島原発事故
日本のエネルギーミックスの原点となったのは、2011年の福島第一原子力発電所事故です。事故以前、原子力発電は国内の総発電量の約30%を担っていました。
しかし、原子力発電所の停止に伴い、その不足分を火力発電が補うこととなり、液化天然ガス(LNG)、石炭、石油といった輸入燃料への依存度が高まりました。
それから10年以上が経過した現在も、日本は依然として化石燃料への依存度が高い状況にありますが、より多様化されたエネルギーミックスへの移行は着実に進んでいます。
日本のエネルギーミックスの現在と今後の展望
過去10年間、再生可能エネルギーは着実に成長を遂げました。その中心となったのが、固定価格買取制度(FIT)による太陽光発電の普及です。太陽光発電設備容量は2024年までに約80GWに達し、原子力発電も原子炉の再稼働により徐々に回復し、2025年までに、福島事故前の原子力発電容量の約28%が再稼働しています
それにもかかわらず、火力発電は依然として発電量の大部分を占めています。
一方で、日本の第7次エネルギー基本計画は、大きく異なる将来のエネルギーミックスを描いています。2040年までに、政府は再生可能エネルギー発電を40~50%、原子力発電を約20%、火力発電を30~40%とすることを目標としています。特に洋上風力発電はますます重要な役割を果たすと見込まれており、2040年までに約20GW、さらに長期的には約40GWの稼働容量に達すると予測しています。
これらの目標を総合すると、輸入化石燃料への依存度を低くし、再生可能エネルギーと原子力発電の組み合わせへと電力システムが移行していくことを示しています。
先進国から学ぶエネルギートランジションの教訓
日本のエネルギートランジションは独自の課題を抱えていますが、再生可能エネルギーの導入で先行する英国やオーストラリアの経験は、日本の今後を考える上で参考になる事例や有益な情報が多くあります。
英国では、10年にわたる政策支援と投資の結果、2025年には再生可能エネルギーが電力供給の半分以上を占めるようになりました。
オーストラリアも同様に急速な発展を遂げており、2025年のある時期には再生可能エネルギーと蓄電が全国電力市場(NEM)の需要の半分以上を供給していました。
両市場において、課題は発電構成の変化とともに進化してきました。初期の投資は再生可能エネルギーの導入に重点が置かれていましたが、普及率が高まるにつれ、送電網の混雑(コンジェスチョン)、出力抑制(カーテイルメント)、卸電力価格の変動といった問題がより顕在になりました。
エネルギートランジションは単に発電量を増やすことだけではなく、それを受け入れるために電力システム全体を適応させることが重要となりました。
日本の第7次エネルギー基本計画も、同様の方向性を示唆しています。再生可能エネルギーが発電量に占める割合が拡大するにつれ、政策の焦点は発電容量だけでなく、それを支えるインフラへと拡大していくと考えられています。
脱炭素化・安定供給・エネルギー安全保障の両立
日本のエネルギートランジションにおいて、脱炭素化は唯一の目標ではありません。エネルギー安全保障も、福島事故後に顕在化した輸入依存の経験を背景に、同等の重要な政策課題として位置付けられています。
このことは、日本の火力発電に対するアプローチにも反映されています。急速な廃止を追求するのではなく、アンモニア混焼、水素混焼、CCUS(炭素回収・利用・貯留)技術に投資し、既存の火力発電設備の排出削減を段階的に図ろうとしています。
これは英国やオーストラリアよりも緩やかな移行経路ですが、日本固有の出発点と電力供給の信頼性を重視する姿勢を反映したものです。
日本のエネルギーミックスの転換と蓄電池業界の役割
再生可能エネルギーが日本の発電構成においてより大きな割合を占めるようになるにつれ、課題は発電容量の増強から、それらを電力システムに効率的に統合することへと移行していくでしょう。
蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)は、再生可能エネルギーの余剰発電を吸収し、出力抑制の低減し、電力系統の安定化を支える上で、ますます重要な役割を果たすことになります。
過去10年間は、日本が「いかに発電するか」が大きく変化した時代でした。今後10年間は、「その電力をいかに効率的にバランスよく供給、貯蔵、送電できるか」が問われる時代になるでしょう。
出典